エンジンからエンジンオイルが漏れてくると
漏れたオイルが「二次災害」を引き起こすことがあります。
今回も整備士として体験した事例をご紹介します。
スズキのワゴンRの中でもK6A型ターボエンジン搭載車のお話ですが、
これはすべての車に当てはまることです。
「明日は我が身」と思っていただけるとリアリティが出ます。
とくにジムニーなんかはこのトラブル多いです。
ジムニーは重い車だから、とくにエンジンがムリしてるんでしょうね・・・
ちなみに、このK6A型ターボエンジンを搭載している車種はほかにもありますので、
該当する車種のターボモデルのお乗りの方には直接降りかかってくる可能性のあるお話です。
Kei、MRワゴン、アルト、エブリィ、キャリイ、ジムニー 、スペーシア、セルボ、ハスラー、パレット、ラパン、ワゴンR、ワゴンRスティングレー
キャロル、スクラム、スピアーノ、フレア、ラピュタ
ピノ、モコ、ルークス
K6A型ターボエンジンのオイルクーラーからオイル漏れ
エンジンの熱がオイル漏れのきっかけ?
今回のオイル漏れの事例はスズキのワゴンRのターボ車の作業についての経験談です。
まず、そもそものオイル漏れの原因は、オイルエレメントの上側にくっついている「オイルクーラー」と呼ばれる水冷式のエンジンオイルを冷却するための部分からでした。
スズキ製のこのK6A型ターボエンジンは、自然吸気のK6A型エンジンにはついていないオイルクーラーがエンジンブロックとオイルエレメントの間にサンドイッチされるように装着されています。
ようするに、ターボエンジンだけは発熱量が多いので、エンジンオイルの油温が上がりすぎないように対策されているわけです。
それでも、エンジンブロックに直接セットされているため、オイルクーラーとエンジンブロックの間にあるパッキンは、つねに高温にさらされることになります。
結果的には、ある程度の走行距離を走ると、オイルクーラーのパッキンが熱で劣化して、オイル漏れが起きるのです。
K6A型エンジンはオイル漏れしやすい?
販売台数と修理頻度は比例する
整備士として、これまでスズキ製のK6A型エンジンのオイル漏れ修理はかなりやってきました。
車検などでお客様とお話ししていると、「なんかこの車になってオイル漏れ修理ばっかりしてる」と言われることもありました。
たしかにこのK6A型エンジンのオイル漏れ修理は数多くやってきましたが、それだけでK6A型エンジンがオイル漏れをしやすいダメなエンジンとは言えません。
まず、このエンジンが搭載されている車種が多いですし、スズキの軽自動車にはほぼすべてこのエンジンが搭載されていた時期も長かったです。
つまり、販売台数が非常に多いエンジンということになり、おのずと整備をする回数も故障修理をする頻度も上がるわけです。
エンジンオイルの管理でオイル漏れの頻度は変わってくる?
このブログでも何度もお話をさせていただいている、オイル交換とオイル漏れの関係。
長期間交換されない劣化したエンジンオイルが原因で、オイル漏れを起こすことがしばしばありました。
具体的には、エンジン内部の内圧が上がりやすくなるということ。
エンジンオイルの質は燃焼室の密閉性の高さに関係していて、オイル交換したすぐのオイルだと、非常に高い密閉性を発揮します。
そこからすこし走行すると、エンジンオイルの機能はガクンと落ちます。
以前、お客様にオイル交換の後と前でオイルフィラーから測定した
COとHCの濃度の報告なんてしてましたけど、みなさん無反応でしたw
ただ、そこからエンジンオイルの性能の落ち方はかなり緩やかになり、1000㎞、2000㎞と走っても、大きな変化はないようです。
ところが、軽自動車だと、オイル交換から3000㎞を超えたあたりから、もう一段階、エンジンオイルの性能がガクンと落ち始めます。
すると、「ブローバイガス」と呼ばれる、燃焼室から吹き抜けてくるガスがエンジン内部に充満してくることで、エンジンの内圧が上がります。
オイル漏れを起こす場所としてかなり多いのが、シリンダーヘッドガスケット(別名タペットカバーパッキン)からのオイル漏れなのですが、
ブローバイガスの吹き抜けが多くなると、とくにこのシリンダーヘッドカバーのガスケットに内圧がかかります。
かなり面積の多いガスケットですから、とくにダメージを受けやすいのだと思いますが、それにプラスして、エンジンオイルの質も悪くなっていて、
水分を多く含んだり、カーボンやスラッジなどの不純物が多くなることで、ゴム製のパッキンなどを傷めやすい傾向にあります。
ようするに、お伝えしたいのは
エンジンオイルをきちんと交換しないとオイル漏れが起きやすいですよ、ということですw
オイル漏れを放置していたら水漏れが発生した!
漏れたオイルはゴム部品を傷める
さて、今回のK6A型ターボエンジンのお話にもどりますと、オイルクーラーとエンジンブロックの間にある小さなパッキンが原因で、オイル漏れが発生することは、このエンジンではよくあることです。
ところが、このオイル漏れを放置していると、そのすぐ真下にあるオイルエレメントや、オイルクーラーに入っているウォーターホースにまで漏れたエンジンオイルが滴り始めます。
オイルエレメントはとにかく、ゴム製のウォーターホースにエンジンオイルが付着すると、エンジンオイルの成分でゴムホースがブヨブヨにふやけたようになっていきます。
とくに僕が思ったのが、劣化したエンジンオイルのほうが、よりゴムホースにはよくないように感じます。
長期間交換されていないエンジンオイルは、なんか焦げ臭いというか、酸化したようなというか、とにかく臭いも悪いです。
結果的に、オイルクーラーに接続されていたウォーターホースが裂けて水漏れを起こしたという二次災害的な水漏れを何度も見たことがあります。
とくに、ジムニーなんかは、エンジンルームの奥のほうにオイルクーラーがあるので、余計に熱がこもりやすいからか、オイル漏れの頻度も高いようです。
ジムニーって全車がターボ付きで、重いし、整備性が悪いから修理代も高いんですよね・・・
まとめ
今回はスズキ製のエンジンのお話でしたが、オイル漏れを放置したことで二次災害が起きるという事例は、どのメーカーのどの車種にも起こりうることです。
とくに高い位置にある部分からのエンジンオイルの漏れは、そこから下にめがけてオイルが伝っていきますから、いろんなところにオイルが付着していきます。
その漏れ出した古いエンジンオイルがどのような「悪さ」をするのかは整備士の僕たちでも予測できないことが多いです。
そもそも論ですが、オイル漏れを放置しなければ発生しないようなトラブルは、定期的に車の点検をして、整備工場のアドバイスにしたがっていればそうそう起きないはずです。
やたらと整備をすすめてくる整備工場や説明不足の整備士もいますが、そこは信頼できると判断できる相手なら任せてみることも大事です。
お医者さんの世界では「セカンドオピニオン」という考え方があります。
診断してもらった整備工場以外に再度相談をするのもいいのかもしれません。
「めんどくさいから放置しとく」はヤバいです
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