車のエンジンオイルを交換しないとどうなるの?それ整備士が答えます!

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車のエンジンオイル交換って、別にキチンとしなくても車は普通に走ってくれます。

ええ、走れますよ。

ガソリンなら給油してあげないとガス欠で止まっちゃいますけど、

エンジンオイル交換をちゃんとしなくても走れなくなったりしませんから。すぐには。

だからエンジンオイルの交換をほとんど意識しないで車を使っているドライバーさんがホント多いんです。(整備士の経験談)

人によっては、オイル交換の必要性を説こうとすればするほど、

「お兄さん、営業がウマいねぇ。」などと言われる始末。

そこで今回は整備士の僕がうんざりするほど経験した、

エンジンオイルの交換をサボり続けた車の末路を切々とお話していきます。

 

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エンジンオイルの交換時期を過ぎたらどうなる?

エンジンとレベルゲージ
まず結論からいうと「なにも起きません」

はい、別にエンジンオイルの交換距離を少々過ぎたくらいではエンジンが壊れたりとかはしませんので、ご安心を。

というよりも、ほとんどのドライバーさんがオイル交換の距離をオーバーしてもなにも問題がないということは、経験していることでしょう。

はい、なにも起きません。ホントに。すぐには。

もちろん段階的に不調になっていくのですが、初期段階はほとんど症状もないので運転手さんも

「あ、エンジンオイルの交換忘れてるなー」

ぐらいの感じでしょう。

それでは、エンジンオイル交換をひたすらやらなかった車の不調を時系列でご説明していきます。

今回は、スズキのワゴンR エンジン型式は K6A を例にお話ししていきます。

 

エンジンオイルの変色が茶色から黒に近づく

通常のエンジンオイルの色は、黄色かかった透明で、例えるならサラダ油のような色です。

走行距離を重ねていくと次第に黒ずんでいきますが、交換したほうがいいのが茶色っぽい色に変わっていったころです。

ワゴンRなどの軽自動車なら5,000㎞も走っていると茶色でもかなり濃い目の茶色に変色しています。

さらにそこからオイル交換をやらずに走行していると

 

サラダ油  →  薄口醤油  →  濃い口醤油  →  たまり醤油  →  再仕込み醤油

 

みたいな色に変色していきます。 (色のたとえがオカシイですかねw)

せめて、「濃い口醤油」ぐらいの段階で交換してほしいですけど。

ですが、この段階ではエンジンにはあまり症状というか不具合は出ません。

ただし、正確に計測するとかなり燃費は悪くなっているでしょう。

 

エンジンオイルには様々な役割があります

「潤滑」「密封」「冷却」「洗浄」「防錆」が主な役割ですが初期段階では

エンジンの密封性が落ちてしまいますので燃費の悪化につながるのです。

■起こりうる不具合
⇒燃費の悪化

■予測できる距離数
⇒エンジンオイル交換から4,000㎞~6,000㎞ほど走行

【関連記事】 車のエンジンオイルの交換時期は色で判断するな!整備士の僕が言いたい事

 

 

エンジンオイルにドロドロと粘り気が

色の変化が進んでいくと、次第にエンジンオイルが本来の粘り気から変化していきます。

先ほどの色のたとえでいくと、

「濃い口しょうゆ」の段階になると、本来はサラダ油くらいの粘り気が、「たこ焼きソース」くらいのドロドロになっていきます。

 

「濃い口しょうゆのような色」

「たこ焼きソースのような粘り気」

 

想像できますでしょうか?

 

この粘り気の変化ですが、これがかなり問題でして、なぜ粘り気がドロドロに変化したかというと、

原因は複数ありますが、まず第一にスラッジがエンジンオイルの中に多く含まれることです。

スラッジは燃えカスなどのカーボンが主な成分です。
エンジンオイルパン内部のスラッジ
↑ 末期症状だとネチョネチョというよりもジャリジャリしています

また、ガソリンが燃えると酸素と水素が結合するので水ができるのですが、

エンジンオイルの中に水分が多く含まれていくことで粘り気の原因にもなります。

 

なので、エンジンオイルを交換するときにエンジンの蓋(フィラーキャップ)を外すと

薄茶色のホイップクリームのようなものが付着していることもあるのです。

この段階になると、エンジンオイルは本来の粘度や潤滑機能を失っているので、

エンジン内部の重要な部分である、メタルやバルブステムシールの摩耗を進めてしまう原因になります。

とくに今回の例に挙げたワゴンRの場合だと、まずこのステムシールの摩耗が進んでいきます。

するとステムシールのすき間(クリアランス)からエンジンオイルが燃焼室に混入し、

ガソリンとともに燃焼してしまいます。

この状態を「オイルさがり」と整備士は呼んでいます。

オイル下がりは、エンジンオイルが減少していく「オイル消費」の中でもまだ初期段階と言えますが、

オイルの量が少しづつ減っていくことが次第にエンジン全体の不具合を招いていくのです。

十万キロ以上は軽く持つはずのバルブステムシールが、たった一度のエンジンオイル交換を大幅にオーバーしただけでも起きてしまうのです。

もちろん、ステムシールは「すり減ってしまった」ので、

それ以降マジメにオイル交換をするようになったとしてもオイル下がりは直りません。

もったいないですよね。

よく街中でマフラーから白い煙を吐き出しながら走っている車を見かけませんか?あれがまさにオイル消費が始まったエンジンなのです。

もしもターボ付きのエンジンだと、タービンへのダメージも少しづつ進んでいます。

タービンの軸受けの部分はエンジンオイルで潤滑しているのですが、この軸受けのシールやベアリングにダメージを受けてしまいます。

■起こりうる不具合
⇒ステムシールの摩耗によるオイル下がり
⇒ターボエンジンならタービンへのダメージ

■予測できる距離数
⇒エンジンオイル交換から6,000㎞~12,000㎞ほど走行

【関連記事】 軽自動車はターボ付きならオイル交換の頻度は超重要!添加剤も必要?

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エンジンオイルの量がさらに不足し始める

さきほどの「オイル消費」が進んでいくと、エンジンオイルがどんどん燃焼してなくなっていきます。

エンジンオイルには適正な量が決まっていて、一定の量が確保できなくなるとエンジン内部の潤滑や冷却ができなくなってしまいます。

最低限のオイルの量が確保できていればごく普通に走ることができるので、

運転手さんも乗っていてもまだ気にならない段階です。

 

この時エンジンの中では大変なことが徐々に起きようとしています。

この段階では劣化したオイルが原因でエンジンの密閉性が非常に落ちているため、

エンジン内部の内圧があがり、様々な部分のゴムパッキンなども劣化しオイル漏れが始まります。

 

エンジンオイルの役割の中でも特に重要なのが「潤滑」ですが、

エンジンオイルの量がとりあえず最低限でも入っていれば、この潤滑はなんとか間に合っています。(なんとかの状態ですが)

ですが、エンジンに負荷をかける運転をすることで、性能が劣化し切っているエンジンオイルではまともな潤滑ができず、

次第にエンジン内部の重要なメタルやピストンリグなどの摩耗が進んでいきます。

焼き付いたエンジン

最近のエンジンは「タイミングチェーン」を採用しているエンジンがかなり多いのですが、ワゴンRのK6A型エンジンもチェーンを採用しています。

エンジンオイルが劣化して量が不足しすると、タイミングチェーンの音が大きくなってきます。

毎日その車に乗っている方は自分の車のエンジンの音の変化には、意外と気づかないものです。

 

そのほか、「カタカタ」とか「カラカラカラ」などのカムシャフト周りの音も聞こえることがあります。

この状態で走っているお客様も僕の整備工場でもかなりおられます。

このことを「控えめに」お伝えすると、

「え?交換距離がだいぶオーバーしてたって?普通に走れたよ。」

とやや不機嫌になる方もおられます。

お客様ですからそれ以上は言いませんが、「ヤバいヤバい」と心の中では思ってしまいます。

■起こりうる不具合
⇒エンジンの音がうるさくなる
⇒エンジン内部の重要な部品へのダメージ
⇒エンジン付近からのオイル漏れ

■予測できる距離数
エンジンオイル交換から⇒12,000㎞~20,000㎞ほど走行

 

 

エンジンオイルの警告灯がチラチラと点く

エンジンオイルの量が不足してくると、走行中にハンドルを切ってカーブを曲がるときや、

ブレーキを踏んで減速するときなどに、エンジンオイルのマークの警告灯が一瞬だけチラリと点いたりすることがあります。


↑ ほとんど詰まりかけのオイルストレーナー

この警告灯は、整備士たちは「プレッシャーランプ」と呼ぶこともあります。

つまり「油圧」が確保できていないことをいいます。

◆関連記事 エンジンオイルのランプが点いたり消えたりは高額修理の予感!

 

エンジンオイルの警告灯が点灯するころには、オイルの量をレベルゲージで確認すると、

最低限度のロアレベルよりもさらに下側、あるいはレベルゲージの先端にもオイルが付着してきません。

エンジンオイルが溜まっているエンジンの下側についている「オイルパン」という容器に当たる部分がありますが、

オイルパンの中のオイルがカーブ中やブレーキング中にチャプチャプと揺れ動くので、

オイルの油圧が一瞬だけ間に合わなくなるために、プレッシャーランプが一瞬だけ点灯するのです。

 

正直に申しますが、警告灯が点くときは手遅れだと考えてください。

この段階だと、明らかにエンジンから大きな「カタカタカタ」とか「カンカンカン」といった打音が聞こえてくることもあります。

この音はエンジンの「断末魔」と思ってください。

■起こりうる不具合
⇒エンジン内部からの大きな打音
⇒エンジン始動時の異音

■予測できる距離数
⇒20,000㎞~30,000㎞

 

走行中にエンジンが止まる

「はい、終了・・・」

という言葉を飲み込みながら、お客様への説明を根気よくします。

この段階になる前に異音や警告灯などのシグナルが車から発せられていたはずです。

「最後にエンジンオイルを交換したのはいつですか」

「エンジンの警告灯が点かなかったですか」

「エンジンから大きな音がしなかったですか」

などの質問をしていきます。

 

別に意地悪をしているわけでなく、

ご本人さまにこうなってしまった原因が本人の管理不足であることを認識していただきたいからなのです。

そのうえで、エンジン載せ替えなどの高額修理や、場合によっては車の乗り換えなどを提案することもあります。

■起こりうる不具合
⇒エンジン内部から非常に大きな打音がする
⇒停車中にエンジンが止まる
⇒走行中にエンジンが止まる

■予測できる距離数
⇒25,000㎞~40,000㎞

 

最後に・・・

今回のお話を読んでいただきながら、どのように感じましたか?

記事の途中に記載している「予測できる距離数」も後半になると随分アバウトになってきていますね。

20,000㎞~30,000㎞とか⇒25,000㎞~40,000㎞とか。

これは、「エンジンにどれくらいの負荷をかけて走ったか」という、

トータルでの仕事量で、故障や摩耗の進みかたが随分違ってくるからなのです。

 

アクセルをガンガン踏んで急加速をする運転

重い物を常に乗せて走る運転

高速道路や上り坂での走行が多い運転

エアコンを多用して人も載せることが多い運転

 

これらの使用条件でも大きく違ってきます。

 

今回の場合は軽自動車を例にしましたが、例えば2000ccクラスのエンジンだとまた条件が変わってきます。

例に挙げた走行距離の1.5倍くらいの数値に置き換えていただいてもいいでしょう。

 

それにしても・・・

たった数千円のエンジンオイル交換をサボってしまっただけで十万円単位の高額な修理と、

レッカーサービスのお世話になってしまうという不便さや損失。

 

エンジンオイル交換は車の維持費を抑えるための

絶対に外せない最低限のメンテナンスだと声を(文字を?)大にしてお伝えしたいです。

 

 

 

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