カーエアコンのコンプレッサーオイルは、エンジンオイル交換のように抜き取るドレンもなければ注入するフィラーもありません。
定期的なメンテナンスとしてのコンプレッサーオイルの入れ替えは推奨されておらず、壊れるまでそのまま使用されることが多いです。
そのいっぽうで、コンプレッサーを長持ちさせるためにオイルの抜きかえを推奨する整備工場もあり、
「コンプレッサーオイルってどこから入れるの?」
と疑問に思われたユーザーさんからのご質問もよくいただきます。
今回は、少しマニアックな(?)エアコンのコンプレッサーオイルの入れ替えなどに関するお話です。
コンプレッサーオイルはどこから入れる?
コンプレッサーオイルだけの給油も排出もできない
コンプレッサーオイルは、クーラーガス(フロンガス)と混ざりあった状態でエアコンのサイクル内を循環しています。
そのため、コンプレッサーオイルだけを抜き取ることはできず、同じ理由でコンプレッサーオイルだけを入れることはできません。
そこでよくやるオイルの補充のやり方として、クーラーガスと一緒にコンプレッサーオイルを注入するやり方です。
サービスバルブからオイルを入れる方法
エアコンのガスを入れる方法として一般的なのがゲージマニホールドやガスジャージの機械を使うやりかたです。
市販されている「オイル入りガス缶」とは
専用のコンプレッサーオイルとクーラーガスが封入されているガス缶をゲージマニホールドに接続し、車体の低圧側パイプにのサービスバルブに繋いでオイルを入れます。
この方法のメリットはガスを抜いたり配管を外す必要がないので比較的に手軽にできることです。
ただし、このやり方ではコンプレッサーオイルを抜くことはできず、ガス缶に入っているオイルを全量入れることになるので、微妙なさじ加減でオイルを入れることはできません。
もちろん注入の途中でサービスバルブを締めてしまえば全量を入れずに止めることもできますが、開封した缶は再使用できないので使い切ってしまうことが多いです。
デメリットは、オイルを足すだけなのでコンプレッサーオイルの入れすぎになってしまったり、注入するオイルの量をこまめに調整できないことです。
本来はエアコンのサイクル内に入っているコンプレッサーオイルの量には適量が決まっているのですが、オイルを抜いていないのに足していると入れすぎになっていきます。
オイル漏れをともなうガス漏れの応急処置に使える
エバポレーターやコンプレッサーからガスとオイルの両方が漏れているケースでは、ガスだけを補充しているとコンプレッサーが焼き付くことがあります。
オイルもガスも減っただけの量を補充する必要があるので、コンプレッサーオイルも補充が必要になってくるのです。
エアコン修理の工程でオイルを入れる
コンプレッサーオイルを入れる方法として、クーラーガスをすべて抜き取った状態から注入するやり方があります。
正式な注入口はないので、配管やコンプレッサーなどに直接入れてしまうのですが、本格的なエアコンの修理をする整備工場でない限りやらないやり方です。
コンプレッサーオイルを直接入れる
エアコンサイクル内にコンプレッサーオイルを入れるやり方として、エアコンガスを完全に抜き取り、配管やコンプレッサーに直接入れるやり方があります。
オイルを入れるためだけに行うのではなく、エアコン修理として部品交換をするときの仕上げの工程としてコンプレッサーオイルを入れることが多いです。
コンプレッサーオイルは「適量に」が難しい
コンプレッサーオイルを入れすぎてしまうとエアコン不調の原因になるので、サイクル内のオイルの総量を考えながらオイルを入れる必要があります。

コンプレッサーオイルは多すぎてもダメ、少な過ぎはもっとダメ。
となると少し多めに入れておきたいところですが、「少しだけ」が難しい。
板金修理でコンデンサー交換するケース
たとえば、交通事故などで車体の前側に損傷を受けた場合、エアコンのコンデンサーも交換することがよくあります。
その場合、古いコンデンサーを外すと内部にコンプレッサーオイルも入った状態になるので、新しいコンデンサーを組み込むときは、失っただけのコンプレッサーオイルを補う必要があります。
その場合、新しいコンプレッサーオイルを適量だけ新しいコンデンサーの中に直接入れてから組み込むようにします。
コンプレッサーオイルの入れ方
専用の機械を使って補充する
コンプレッサーオイルはエアコンガスと一緒に入れるやり方が一般的で、ゲージマニホールドやガスジャージの機械を車に接続し、ガスと一緒にオイルを吸い込ませるやり方です。
エアコンを作動させているとき、エアコンサイクルの低圧側の圧力は、ガス缶の圧力よりも低いので、圧力が高いガス缶からガスと一緒にオイルが吸い込まれていきます。
200グラムのガス缶なら4kgf/cm2ほどの圧力があり、車体の低圧側はACボタンを入れてエンジンの回転を上げれば2kgf/cm2くらいまで低下します。
この圧力の差を利用してガス缶の中身が入っていくので、一緒にオイルも入れることができるのです。
ガス缶の圧力を利用してオイルを入れるよりも専用のエアコンガスクリーニングなどができる機械を使うほうが細かい分量の設定もできます。
コンプレッサーなどに直接入れる
コンプレッサー内部の不具合でコンプレッサーをまるごと交換するときに、コンプレッサーオイルを補充しておくことがあります。
ただし、リビルト品や新品のコンプレッサーにはすでにコンプレッサーオイルが入っているので余分に入れる必要はありません。
中古品のコンプレッサーを組み込むときなどはコンプレッサーの状態などを確認しながら適量だと思える量を入れていくことが多いです。
高い位置の配管から入れることも
コンプレッサーがエンジンの下側付近にある車種の場合、コンプレッサーまわりの配管を外すとかなりのコンプレッサーオイルが抜け出ることがあります。
基本的には、抜けただけの量のオイルを補充する必要がありますが、オイルの補充をするならサービスバルブのコアを外して入れるなど、高い位置から入れることもあります。
エバポレーター交換では必須作業
エアコン修理の中でもかなりのコンプレッサーオイルを失うのがエバポレーターの交換作業です。
エバポレーターは室内のダッシュボード奥付近にあり、冷たい空気を作るために気化熱を取り出している部分です。
エバポレーターを外してみると、かなりの量のコンプレッサーオイルが中に残っていて、新しいエバポレーターには必ずコンプレッサーオイルを補充しておく必要があります。
別の記事でも書きましたが、エバポレーターからのガス漏れではコンプレッサーオイルも抜けていることが多く、エバポレーターの交換では抜け出たオイルの補充も大事です。
【関連記事】 HE22S型ラパンのエアコンが効かない原因と修理の振り返り

↑
オイルの補充をせずに
エアコンガスの補充ばかりを続けていたために
コンプレッサーの焼付きに発展してしまった事例でした。
コンプレッサーオイルの補充は「修理」ではなく「応急処置」

↑焼き付いて内部のベーンが固着してしまった
エアコンコンプレッサーの末路。
コンプレッサーオイルが少なすぎるとこんな結果に・・・。
コンプレッサーオイルが漏れている場合、抜けただけのオイルを補充することは大事ですが、あくまでも壊れないための応急処置と考えておきましょう。
オイルが漏れる場所にもいろんなパターンがあり、なかには大変な部分からガスとオイルが漏れていることもあります。
軽自動車やコンパクトカーなど、修理費用が高額になると車の買い替えに発展してしまうケースもありました。

たとえば、10年経過した軽自動車に
10万円を超えるエアコン修理をするのは
コスパを考えるとちょっと微妙ですよね。
ガス漏れ修理をするのが望ましい

↑
低圧ホースのゴムホースとパイプのカシメ部分からガス漏れをすることがあります。この場合だとホースを交換するだけでガス漏れは解消されます。
スバルのサンバーなんかは定番のエアコン修理ですね。
高額なエアコン修理も多いですが、部品交換がやりやすい場所からオイルが漏れていることもあります。
その場合は早めに部品交換をして漏れを止めておくことでエアコントラブルを減らすことができます。
オイルの量が変われば「冷え」も変わる
そもそもコンプレッサーオイルを入れる理由にもいろいろありますが、調子がいい状態のエアコンにコンプレッサーオイルを入れるのはあまりおすすめできません。
エアコンガスの量ももちろん大事ですが、コンプレッサーオイルの量もクーラーの効きに関係してきます。
その車のエアコンサイクルに、トータルでどれくらいの量のコンプレッサーオイルが入っているのかを確認することはできません。
新車からのなにもしていない状態ではある程度の量のめぼしは付きますが、途中で補充した場合はわからなくなります。
いろんな整備工場やガソリンスタンド、ディーラーなどでガスやオイルの補充をした場合、どんな分量のオイルを、どういう根拠で入れているのか不明になってきます。
クーラーガスクリーニングの必要性
問題なく冷えている状態なら整備工場やガソリンスタンドで勧められるオイル補充やクーラーがスクリーニングはあまり必要ありません。
場合によってはクーラーの冷えが悪くなってしまう事例もあり、エアコンの修理やメンテナンスに詳しい整備工場や電装屋さんに相談することが望ましいです。
■関連記事
エアコンガスクリーニングの必要性や頻度は?不具合は出ないの?
エアコンのコンプレッサーオイルを入れすぎた症状とは?抜き取り方法は?
コメント